その日は久々に、一族郎党が集まる日だった...。
「これで全員集まったのかな?」
長男が周りを見渡している。
「招待状はきちんと出したのかな?最近は
どうも出席率が悪いようだが...」
「無理もないですよ」
今回の連絡役をかってでていた三男坊
がため息混じりに話し出した。
「最近になって急に兄弟の数も増えてしまい
ましたからねぇ...全員の正確な数も、
実をいうと把握できていないんですよ...」
「いや、それを今回の議題として立ち上げ
ようとしていたのですが...」
と切り出したのは次男坊である。
「一族公認の兄弟もいろんな所に散らばって
いる状態でしょう?全員の数をキチンと
把握できていないのが現状なんですよ」
「...なんということだ...」
それまで黙って聞いていた、長老が苦々
しそうに話を切り出した。
「嘆かわしい話だ...。
未公認のものの中には素顔にペイントまでして
悪魔に魂をゆずったものまでいるというではないか。」
「しかし、本当に悪いことをしているわけ
ではありませんし、聞くところによると、
かなりの人気者のようですし...」
一族の父親役が、頑固そうな長老をなだめに
かかったのだが、それが逆に老人の怒りに
火をつけてしまった。
「なにをいうか!!」
長老は興奮のあまり立ち上がって、叫んだ。
「人気のあるなし、公認の有無はこの際関係
ない!!ワシは一族の名を名乗るなら、
最低限その名を辱めることだけはさせては
ならんと言うことが言いたいんじゃ!!」
「いや、確かにごもっとも......。」
額の汗を拭きながら、怒鳴られた父親役
は苦笑いを浮かべた。
「最近では、公認の兄弟でありながら、
CMまがいの映画に出演しては、一族の名を
使って企業の宣伝までしておる者もおる
というしな......」
「ですが、みなさん」
もと教師だった者がおもむろに口を開いた。
「それはあくまでごく一部の不心得者のことで、
実際はそんな者ばかりいる訳ではありません。」
一呼吸おいて、元.教師は更に話を続けた。
「私が調べたところによると、とあるローカル
の会社代表に納まっている者がおりまして...」
「フン!!」
話の途中で長老が割ってはいった。
「どうせ、そやつも一族の名をかたって、
商売に利用しておるのじゃろう。」
「いえ、長老。」
もと.教師は老人の嫌みをやんわりと否定した。
「その者は、海岸に出てゴミ拾いをしたり、
子供たちと積極的にコミュニケーションを
とっているのです。さらにこの間は、
悪者退治を行い、その功績を称えられて、
立派なベルトまで手にしたとのこと。」
「それは私も見た」
と、発言したのは四男である。
次兄とよく間違われることを何かの折につけては、
しきりとこぼしていたものだった。
「だが、今の報告にあったほど立派なものでは
なかったぞ。それにただの飾りのようだったし、
戦うときにいろんな武器に変化して使うこと
さえできそうにない。その点、わたしが長兄から
譲り受けた腕輪は...」
『四男の自慢話がこれ以上続くと、
話があらぬ方向に行ってしまう。』
そう判断した次兄が話を遮った。
「まあ、ベルトを護るための戦いもして
いるようですし、決して商売だけではないようです。」
「ところで最近認定された、一番新しい兄弟の
状況はどうなっているのか?」
それまで発言を控えていた長男が、
五男に話を振った。
「えー...いまのところは一族の名を
辱めるような戦いはしていないようですね。
ちゃんとした組織に所属して、正義のために
働いているようですよ。どっかの誰かさん
と違って...」と、五男は、隣に座って
いた六男をちらっとみやった。
明らかにその目線は軽蔑の意味合いを
含んでいた。六男はただうつむいて座っている。
「一族」といっても「義兄弟の契り」を
交わしただけで、本当に血のつながった
兄弟ではない。だが、この六男と、
一族の父親役とは実の親子だった。
痛いところを突かれた「父親役」は
おろおろし、「息子」はますますうつむいた
ままだった。と、そのとき....
「いい加減にしてください!!」
バンッ!!と机をたたいて立ち上がったのは、
七番目の兄弟だった。もともとは三男の弟子筋
に当たり、スポーツ根性ものもかくやという
厳しい特訓を経て、晴れて仲間入りした
苦労人でもある。
「兄さんは一族の中で人気がないのを
ねたんでいるんだ!!」
「何だと?!」
売り言葉に買い言葉。五男も立ち上がって
怒鳴った。
「女の人には指輪を突っ返されて、あげく
逃げられているくせに!」
「このぉお、言ってはならんことを...」
「よさんか!」
それまで黙っていた長老が二人をしかりつけた。
「こんなところで仲間割れしてどうするんじゃ。全く...」
それまで熱くなっていた二人も、先ほどの剣幕が
嘘のように押し黙ってしまった。
「と...とにかく、今日集まってもらったのは、
けんかをすることでもなく、ましてや仲間割れを
することでもないのです。」
ようやく次兄が司会進行し始めた。
「我々はこれからも一族の名を辱めることの
ないように...その名を辱めるものがいれば、
厳しく監視すると言うことで、よろしいですね。」
「異議なしっ」
『やれやれ...皆なんだかんだせいっても
正義の味方だったんだな...』ようやく、
ヒーローにあるまじきけんかも収まって、
「族会議」はスムーズに進行し始めた。
『それにしても、いくら正義のためにため
とはいえ、これ以上兄弟の名前を安売りするのは、
考え物だなあ...』
ふうっ...と深いため息をついた
「ウルトラの父」は、あまりにも増えすぎてしまった
兄弟たちの姿を、困惑の面持ちで見つめていた。
(完)
1996年発出。2008年一部加筆、訂正。
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